佐久・中山道さんぽ 第4弾|茂田井間の宿:小さな宿場町の静けさに包まれて初夏のさんぽ

こんにちは。プラザ佐久です。
天気の良い日は、どこかへ出かけたくなりますよね。佐久市の中山道沿いには、のんびり歩いて楽しめる宿場町が点在しています。
今回の連載では、各宿場町の魅力や見どころをご紹介します。宿場町を巡る「歴史さんぽ」はいかがでしょうか。

第4弾は「茂田井間の宿(もたいあいのしゅく)」です。
ひっそりとたたずむ宿場町で、古い街並みと自然を感じながら散策してみてはいかがでしょうか。

茂田井間の宿とは

茂田井間の宿は、中山道望月宿と芦田宿の間に位置する地域です。江戸時代、宿場間の距離が長かったため「間の宿」として設けられました。本陣や旅籠はなく、旅人が休息するための場所として機能していたそうです。
幕府は本宿以外での宿泊を厳しく取り締まっていたため、茂田井はあくまで休憩所ですが、大行列や特別な事情の際には重要な役割を果たしていたそうです。

また、茂田井は良質な米の産地であり、小諸藩主や家臣たちが茂田井産の米を江戸まで運ばせた歴史があります。元禄2年(1689年)には酒造りが始まったそうで、現在も2軒の老舗酒蔵が現役で稼働しています。

町並み・見どころ

宿場の長さは750m〜1.7kmほどで、江戸時代の道幅や町割りがそのまま残っているため、ほとんど当時と変わらない町並みが残されています。

望月地区にある「おいでなんし望月へ駐車場」や「望月商工会佐久市観光協会望月支部駐車場」からは、徒歩で35分です。駐車場から徒歩で向かうと、道沿いにある道標などの史跡を見ながら歩けます。
また、宿場の中には、アクセスしやすい場所に「大澤酒造駐車場」があります。

歴史的な建物と文化財

茂田井間の宿で最大の魅力は、昔ながらの町並みが残されていることです。明治・昭和期に新たな道が集落を迂回して整備されたため、現代的な開発を免れ、当時の面影が色濃く残りました。
白壁の土蔵や板塀、連子格子の家々が旧街道沿いに並び、道端には江戸時代から続く水路が静かに流れています。この水路と坂道のある地形は町並みの風情を一層引き立てています。

引用:佐久市デジタルフォトギャラリー

町並みの保存は、法的な景観保存地区の指定によるものではなく、住民たちの「この景観を後世に残したい」という強い思いと自主的な努力によって守られてきたそうです。
この住民主体の保存活動によって、茂田井間の宿ならではの温かさと静けさを今に伝えています。

江戸時代後期の住宅や酒造施設など30棟が国の登録有形文化財に指定されています。これほど多くの建物が一度に登録されているのは全国的にも珍しいそうです。
特に、大澤酒造と武重本家酒造の建物は現役で使われており、伝統的な酒蔵建築や蔵の敷地が良好な状態で保存されています。

大澤酒造

元禄2年(1689年)創業の330年以上の歴史を持つ老舗酒蔵です。
酒蔵は非公開ですが、敷地内には、酒造りに使われていた古い酒蔵を改装した「しなの山林美術館」「大澤酒造民俗資料館」「名主の館書道館」があります。

「民俗資料館」が開設された経緯は、創業元年に醸造されたと思われるお酒が蔵内で見つかり、現存する最古の日本酒と認定されたことがきっかけでした。資料館には、その日本酒が詰められていた古伊万里の壺「秘蔵元禄の壺」や、酒造に眠っていた数々の資料が展示されています。
資料館の隣接には、大澤家出身の画家・大澤邦雄氏の喜寿を記念して建てられた「しなの山林美術館」と、近代書道の祖・比田井天来や天来門流作家の作品、明鏡止水のラベルの書家・吉野大巨氏の作品などが展示されている「名主の館書道館」もあり、歴史とともに芸術も堪能できるスポットとなっています。

資料館の営業時間は9:00〜17:00(最終入館16:30)。定休日は年末年始です。団体の場合は事前連絡が必要です。

参照:長野県博物館協議会

武重本家酒造

江戸時代後期から明治・大正期にかけて建てられた住宅や酒造施設は、前述の登録有形文化財群の一部であり、主屋をはじめとする建物が今なお当時の姿をとどめています。土蔵造りや切妻造りといった伝統的な建築様式が残され、蔵の中では現在も日本酒造りが続けられています。

映画「たそがれ清兵衛」や「男はつらいよ」のロケ地であり、「サマーウォーズ」では武重本家酒造の建物が作中のモデルとなって登場しています。
また、明治・大正時代の歌人である若山牧水がこの地を訪れたことを記念し、敷地内に歌碑が建てられています。牧水が詠んだ酒や旅をテーマにした和歌が刻まれ、文学ファンにも人気のスポットとなっています。

歴史と信仰に触れる寺社と史跡

神明社:茂田井の鎮守社です。伊勢神宮と同じ神明造りの本殿が特徴で、地域の人々の信仰を集めてきました。

諏訪社:境内には村内各地から集められた大小9基の夫婦道祖神が並んでいます。

無量寺:古くからこの地域にある寺院です。

石割坂:茂田井宿の上組と下組を結ぶ坂道です。かつて大きな岩があったそうですが、中山道整備の際に岩を砕き通りやすくしたことから、石割坂と呼ばれています。

茂田井一里塚:江戸時代の旅人が距離の目安とした塚で、当時の交通や旅の様子が感じられます。

上組高札場跡:江戸時代、法令やお触れを掲示した場所の跡で、当時の行政や地域の様子を伝えています。

参照:佐久商工会議所:佐久歴史の道

茂田井間の宿のグルメと体験

大澤酒造

伝統的な手作業と最新設備を組み合わせ、吟醸造りや純米酒造りなど、さまざまなタイプの日本酒を手がけています。
代表銘柄は「明鏡止水(めいきょうしすい)」です。歴史のある蔵元で14代目の当主が生み出したお酒です。クセのないクリアな味わいと、上品で穏やかな香りが魅力的な人気のある地酒です。
限定流通の代表銘柄である「勢起(せき)」は、伝統的な生酛(きもと)仕込みで造られる熟成酒です。「勢起」の名は現蔵元のご曾祖母の名前に由来し、ラベルは孫で書家の服部小湖(久子)氏が手掛けています。木島平村特産の手すき和紙「内山紙」を使用しており、家族や地域への敬意とつながりが表現されています。

併設されている「民俗資料館」では、日本酒の試飲ができます。複数の銘柄が用意され、飲み比べて気に入ったものは購入できます。
また、運転者やお酒が苦手な方には、大澤酒造が日本酒の仕込みにも使う良質な蓼科山の湧き水の「御泉水」で作った「御泉水サイダー」もおすすめです。
大澤酒造株式会社

武重本家酒造

創業以来一貫して伝統的な「生酛(きもと)造り」を守り続けている酒蔵です。生酛造りは、蔵の空気中にある天然の乳酸菌や酵母を取り入れ、時間と手間をかけて酒母を育てる伝統技法です。木製の半切桶や暖気樽など、昔ながらの道具も使い続けているそうです。
腰が強く・味わい深く・長期熟成にも耐えるのが特徴で、「牧水(ぼくすい)」や「御園竹(みそのたけ)」などの銘柄が有名です。

新緑さんぽの際には、武重本家酒造の歴史的な建物はぜひ見ていただきたいスポットの1つです。残念ながら通常は内部の見学や試飲はできません。
ただし、新緑の季節と時期が異なりますが、春分の日(3月20日頃)や秋の「どぶろくの日」(10月26日)など、年に数回「酒蔵開放」のイベントが開催されています。
詳細については下記URLからご確認ください。
武重本家酒造株式会社

酒蔵開放の際には、武重本家酒造で作られた美酒の数々を手作りの野沢菜漬けをつまみに飲み比べができます。手打ちそばや蓼科牛のハンバーガー、甘酒の提供もあるほか、社長宅の庭でお茶と地元の銘菓を楽しむこともできます。お酒が苦手な方や運転される方、お子さんも楽しめる内容です。
全国でも数少ない「本物の生酛造り」を守る蔵として欠かせない歴史のある建物は、貴重な資産であり一見の価値があります。その美しい建築もぜひご覧ください。

Cafe ROND

茂田井間の宿の中にあり、大澤酒造から徒歩2分の場所にあります。土蔵をリノベーションし、町並みに溶け込むような落ち着いた雰囲気のカフェです。
さんぽの合間にも立ち寄りやすく、地元の素材を使ったスイーツやコーヒーで、ほっと一息つけます。
Cafe ROND

参照:長野県魅力発見ブログ

茂田井宿を満喫するための過ごし方

歴史的な町並みと社寺への参拝

約750メートル続く古い家並みを歩きながら、住民の手で守られてきた宿場の雰囲気や坂道・水路のある独特の地形を楽しんでみてはいかがでしょうか。地域の社寺に足をのばし歴史や信仰に触れるのもおすすめです。

酒蔵見学と美酒を試飲、文化・芸術にも触れられます

江戸時代から続く2軒の酒蔵(大澤酒造・武重本家酒造)で作られるおいしいお酒を味わい、しなの山林美術館や大澤酒造民俗資料館など、地域の文化や芸術を楽しんでください。

ガイドウォークを利用して学びを深める

「佐久歴史の道案内人の会」などによるガイドウォークを利用して、歴史や地元の暮らしについてより深く学び知ることができます。
ガイドウォークについては、佐久市にある宿場町が対象です。以下URLから詳しい情報をご覧ください。
佐久歴史の道案内人の会

参照:長野県魅力発見ブログ
   佐久市

所要時間の目安

茂田井間の宿をゆっくりさんぽしながら楽しむ際には、約1〜2時間ほどで主要なスポットを巡ることができます。写真撮影や酒造見学、各所の案内板をじっくり読み、ゆっくり楽しんでください。

アクセス・さんぽのポイント

・佐久南ICから車で22分
・JR北陸新幹線佐久平駅から車で23分
・公衆トイレは宿場内に1カ所あります。望月地区の「おいでなんし望月へ駐車場」・「望月商工会佐久市観光協会望月支部駐車場」から徒歩でアクセスする際には、徒歩8分の場所にある佐久良公園内にもトイレが設置されています。
詳しくは地図をご覧ください。
Googleマップ
・飲食店や売店は少ないため、飲み物や軽食を持参しておくと安心です。

まとめ

茂田井間の宿は、江戸時代の町並みや歴史的建造物が良好な状態で保存されている宿場町です。
住民たちの思いが息づくこの町で、のんびりとさんぽをすれば、きっと心に残る癒しの時間となるでしょう。

中山道については、別記事でも詳しく紹介していますのでご覧ください。
歴史が息づく中山道・佐久の宿場町めぐり

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