佐久・中山道さんぽ 第2弾|小田井宿:軽井沢から少し足をのばして、静かな宿場町を歩く
こんにちは。プラザ佐久です。
お出かけにぴったりな季節になってきました。
佐久市の中山道沿いには、のんびり歩いて楽しめる宿場町が点在しています。
今回の連載では、各宿場町の魅力や見どころをご紹介します。初夏の空気と風景にぴったりの“新緑さんぽ”をご提案します。
第2弾は「小田井宿(おたいしゅく)」です。
日常の喧騒から少し離れて、静かな宿場町で癒されてみてはいかがでしょうか。
小田井宿とは
小田井宿は、かつて江戸と京都を結んだ重要な街道、中山道の宿場町の一つです。険しい碓氷峠を越え、信州の佐久平に入って最初に現れる宿場町の入口にあたります。
その規模は本陣1軒、脇本陣1軒、旅籠5軒と比較的小規模でしたが、重要な役割を担っていました。
隣接する追分宿には、大名行列が宿泊することが多かった一方で、小田井宿は姫君や身分の高い女性たちが主に利用したことから、「姫の宿」とも呼ばれていたそうです。静かで落ち着いた雰囲気が、女性たちの旅の疲れを癒したのかもしれません。
町並み紹介・見どころ
小田井宿は主要幹線から外れているためか、古い建物や当時の雰囲気が色濃く残されていることから、「中山道小田井宿跡」として御代田町指定史跡として保存されています。
小田井宿には中山道小田井宿観光客専用駐車場があり、無料で利用できます。数台が停められる小規模な駐車場ですが、宿場内にありアクセスがしやすいです。
また、御代田駅からは徒歩20分の距離です。歩いていくと、長野県道137号線と交わる小田井上宿交差点に「小田井宿入口標柱と石塔」があり、中山道を江戸方から辿るように歩くことができます。
宿場町を感じる建物
小田井宿の本陣は、安川家が代々務めてきたそうです。
建物は、宝暦6年(1756年)に建てられており、改修が行われながらも一部当時の建物が残っているようです。
文久元年(1861年)に、皇女和宮が14代将軍徳川家茂の元へ降嫁する道中で、休憩のために本陣に立ち寄ったそうです。
現在では、毎年8月16日に「小田井宿まつり」が開催され、嫁いだ和宮の嫁入り行列を再現した行列が町を練り歩きます。歴史好きの方には見逃せないイベントです。
参照:御代田観光協会
脇本陣(尾台家)は、本陣のはす向かいにありましたが、明治期に小田井を引き払い移転したため建物は残されておらず、現在は表示があるのみとなっています。
小田井宿には、問屋が2軒ありました。
上の問屋は、本陣と同じ安川家が営んでいたそうです。
建物は江戸後期のもので、出桁造りと連子格子が綺麗に残されています。内部は非公開ですが、荷置き場・帳場・客室部・馬や・土間などの保存状態も良好だそうです。
下の問屋は、飛脚問屋でもあり尾台家が営んでいました。建物は明和9(1772)年の大火以降のものです。妻入り本棟造りの豪壮な造りで、破風には懸魚がついています。また、板塀の上を這う松は樹齢300年余りなんだそうです。
2軒の問屋は半月交代で仕事をしていたそうです。
旅籠は5軒ありました。和泉屋は文化・文政年間の建物で、明治期に養蚕のための改造がされたようですが、旅籠屋の原型をよく留めています。
元禄期の建物とされる大黒屋も、玄関に大戸を持つ当時の建築様式を見ることができます。
前田原の名主屋敷などが残る裏道は、旧中山道の古道で江戸時代の生活道路でした。
中山道と並ぶ形で通り、飯玉神社の前を通り栄町で中山道に合流します。この道は道祖神などの石造物や焼石の石垣も残されており、当時の雰囲気を感じられる道になっています。
旧中山道沿いを歩いていると、各所に史跡案内板が設置されています。案内板を読みながら、かつての旅人たちの姿を想像しつつ、ゆったりとさんぽしてみてはいかがでしょうか。
田園風景と浅間山の大パノラマのなか、新緑の季節には特に爽やかな風が吹き抜け、心身ともにリフレッシュできることでしょう。
寺社と史跡
次に、小田井宿周辺の寺社や史跡を見ていきましょう。
真楽寺
境内には長野県宝に指定されている三重塔や、御代田町指定文化財の観音堂、天然記念物の神代杉などがあります。甲賀三郎の龍神伝説発祥の地として知られ、聖徳太子、源頼朝、松尾芭蕉も参拝したと伝えられています。
甲賀三郎龍伝説に基づいた龍神まつりが、毎年7月の最終土曜日に開催されています。真楽寺の境内で行われる龍神開眼式から始まり、杉木立に囲まれた神秘的な雰囲気の中、爆竹や龍神太鼓保存会「鼓響」の太鼓の音が響き渡ると、龍神が1年間の眠りから目を覚まします。このあと会場を龍神の杜公園に移し、最高の盛り上がりをみせます。
長倉神社・諏訪神社合殿
産土神で鎮守でもあり、社叢には推定樹齢200〜300年の古木が多く御代田町の指定天然記念物となっています。
「小田井の道祖神まつり」は御代田町指定無形民俗文化財で、長倉神社・諏訪神社合殿での祭事を起点に行われます。藁で作られた大きなわら馬を引いて町内を練り歩くのですが、わら馬は子ども達が乗れるほどの大きさがあり、境内の神馬舎に保管されています。
御代田一里塚(大久保一里塚)
旅の目印であった一里塚も残されています。
江戸初期に中山道が整備された際に作られ、寛永12年(1635年)の道路改修で街道から外れたことで、保存状態が良いまま残っています。当初は榎があったそうですが、現在はしだれ桜が植えられています。中山道佐久地域で原形をとどめるのはここだけであり、長野県史跡に指定されています。
宝珠院
樹齢300年のしだれ桜やアカマツがあり、御代田町の天然記念物に指定されています。
小田井城址
かつての山城の跡。小田井氏によって築城され、武田氏家臣板垣信方により落城した佐久屈指の大きさを誇る城でした。小田井宿の東側にあり、3方を囲う深い谷が強固な城壁となっていました。入口のW字の形をした堀や空堀、土塁、女性や子どもが逃げたと言われている「くぐり岩」の抜け穴跡が残っており、歴史を感じることができます。
参考:
佐久商工会議所:佐久歴史の道
御代田観光協会
御代田町
ぷらざINFO
佐久広域連合
小田井宿周辺で味わう旬の恵みとくつろぎのひととき
特産品
小田井宿のある御代田町は、豊かな自然に恵まれ、美味しい特産品も豊富です。
おにかけうどん
御代田町を代表する郷土料理です。地元野菜をふんだんに使い、豚肉や油揚げなど具だくさんの温かいうどんで、「煮た汁をかける」ことから「おにかけうどん」と呼ばれています。現在では、地元のイベントなどで味わうことができます。
高原野菜
標高800mの御代田町で育つ野菜は、みずみずしく、味が濃いことで有名です。特にレタスは、国内でも知られた 生産地の一つになっており、町内の産地直売所などで新鮮なものが手に入ります。
信州そば
水がきれいな信州は、そばの産地として知られていますが、御代田町の冷涼な気候と豊かな自然は、そば栽培に適しています。町内には、手打ちそば店や製麺所が点在しており、風味豊かな信州そばを味わうことができ、ふるさと納税の返礼品にもなっています。
参照:御代田観光協会
プラザ佐久では、信州そばについてご紹介しています。合わせてご覧ください
佐久の蕎麦で地域の魅力とおいしさに出会う、味わい深い旅のひととき
小田井宿周辺の施設とグルメスポット
歴史的な魅力にあふれる小田井宿周辺には、近年オープンした新しいスポットや、地元で人気のグルメスポットもあります。散策の合間に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
龍神の杜公園
「龍神まつり」のメイン会場になる公園で、「龍神伝説」をテーマに整備され、普段は親子連れに親しまれています。広大な敷地で、自然を満喫できる公園。散策やピクニックに最適です。御代田駅から徒歩6分、小田井宿から徒歩27分の場所にあります。
小田井宿 豊庵
本陣から徒歩1〜2分の場所にあり、地元産の旬の食材を活かした会席・懐石料理を提供しています。
これらのスポットは、小田井宿の散策と合わせて訪れることで、より充実した旅になるでしょう。
小田井宿を満喫するための過ごし方
小田井宿の魅力は、コンパクトな町並みの中に、歴史の香りや自然の美しさがぎゅっと詰まっていること。主要な見どころが徒歩圏内に収まっているため、のんびりと歩くだけで宿場町の空気を存分に味わえます。
中山道を江戸方から辿るように、宿場の東の入口からさんぽスタート
小田井宿入口標柱のある小田井上宿交差点から歩いていくと、本陣跡や問屋場跡、大黒屋跡などの史跡が点在しています。随所にある案内板を読みながら歩くと、当時の宿場の暮らしが自然と浮かび上がってきます。
町を見守る浅間山の景色
さんぽの途中には、田畑の向こうに浅間山が雄大にそびえる風景が目に飛び込んできます。写真を撮ったり、ちょっと立ち止まって眺めたりするだけで、心が癒されるでしょう。静かな地域だからこそ、自然の美しさをじっくりと味わえます。
歴史の面影
かつての城郭跡である小田井城址や、御代田一里塚(大久保一里塚)などの史跡が点在しています。少し足を延ばせば、寺社の数々にも立ち寄れ、地域の信仰と歴史を感じられます。
さんぽの合間には一休みも
「小田井宿 お休み処」には東屋が設けてあるので、休憩場所として重宝します。
所要時間の目安
小田井宿の主要スポットは1〜2時間程度でゆっくり巡ることができます。史跡をじっくり見ながら歩くのもよし、自然の中でゆっくりひと息つきながら過ごすのもおすすめです。
アクセス・歩き方のポイント
・しなの鉄道「御代田駅」から車で4分、徒歩22分
・上信越道「佐久IC」から車で6分
・小田井宿には公衆トイレがありませんので、ご注意ください。御代田駅や龍神の杜公園には、トイレが設置されています。
・飲食店が少ないため、飲み物など持参すると安心です。
・駐車スペースが限られているため、御代田駅からのアクセスもご検討ください。
まとめ
今回は、中山道沿いの静かな宿場町、小田井宿の魅力をご紹介しました。古い建物が残る町並みをのんびりさんぽしたり、周辺の寺社や城跡を巡ったり、自然豊かな場所にある静かな宿場町が小田井宿の魅力です。
新緑が美しいこの季節に、歴史と自然に包まれた小田井宿で、心安らぐひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。きっと、忘れかけていた日本の原風景に出会えるはずです。
中山道については、別記事でも詳しく紹介していますのでご覧ください。