佐久にも存在する「もう一つの五稜郭」
こんにちは。プラザ佐久です。
日本の五稜郭といえば、北海道・函館の五稜郭が有名ですね。
実は、佐久市にも五稜郭があるのをご存知でしょうか?
それが龍岡城(たつおかじょう)五稜郭です。
龍岡城五稜郭は日本に2つしかない、星型稜堡(りょうほ)式の城郭の1つです。貴重な城郭の歴史をはじめ、その特徴や魅力を見てみましょう。
佐久の五稜郭
佐久市の五稜郭は、龍岡城という江戸時代に建てられたお城の跡で、本州に現存している唯一の五稜郭です。
そもそも「五稜郭」とは?
五稜郭とは、五つの稜が星形に突き出た稜堡(りょうほ)式の城郭です。稜堡とは、要塞や城壁の外に向かって突き出した角の部分のことを言います。この星形要塞は、もともと15世紀のイタリアで誕生したものといわれており、戦で火砲に対応するための築城方式です。
星型要塞は死角が少なく多角的に外部を見ることができるため、敵を効率的に追撃することができるそうです。函館の五稜郭は、幕末時代に外国船による大砲攻撃を防ぐために設計された、日本初の西洋式城郭です。
臼田地区の「龍岡城五稜郭」
五稜郭 空撮②(令和6年)
(DL:2024/12/25、撮影:佐久市、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス表示 4.0 国際から転載)
龍岡城は臼田地区、長野県佐久市田口にあった城で、こちらも幕末期に築城されました。築城にあたった田野口藩(後に龍岡藩)は小さな藩であったため、城主の格式は認められず、城ではなく田野口陣屋だったようです。現在は堀と土嚢、「御台所」とされる建物の一部が残っており、国指定の史跡となっています。
なぜ佐久にあるのか?
龍岡城五稜郭を築城した田野口藩主「松平乗謨(のりかた)」。
乗謨は現在の愛知県岡崎市にあった「奥殿藩(おくとのはん)」の領主の元に生まれましたが、家督を継いだあと、領地のあった臼田に移ったとされています。
乗謨は識見・学才に優れた人物で、幕末の混乱期に日本の軍備強化について考えるようになります。また西洋の軍学に関心があったため、フランス人士官から築城法を学んでいました。そして陸軍総裁に任じられた際に、学んだ稜堡式築城法を採用し、龍岡城五稜郭を築城したとされています。
龍岡城は元治元年3月(1864年)に着工され、御殿や大手門、東通用門などが完成し、慶応3年4月(1867年)に竣工が祝われたそうです。しかし、未完成のまま明治維新を迎え、跡には近くの寺から学校が移転。令和5年に臼田地区の小学校が統合し閉校になるまで「佐久市立田口小学校」として利用されていました。
お城の中に学校が建設されているのは全国的にも珍しいことだそうです。
(参考:佐久市『龍岡城五稜郭』)
函館市の五稜郭との違い
佐久の五稜郭と函館の五稜郭、外敵から領土を守る要塞としての役割は同じですが、その違いは五稜郭の大きさです。函館の五稜郭は、佐久の五稜郭の約2倍の大きさがあるそうです。
建設された時期は、ほぼ同時期。函館の五稜郭は1864年にほぼ完成し、佐久の五稜郭は1867年に御殿が完成したそうです。
龍岡城五稜郭の楽しみ方
佐久を訪れるなら、本州唯一の五稜郭である龍岡城にもぜひ足を伸ばしてみてください。ここからは龍岡城五稜郭の楽しみ方をご紹介します。
五稜郭公園は季節を問わずに散策を楽しめる
龍岡城五稜郭跡地に整備された五稜郭公園で、ゆったりとした時間を過ごしてみてはいかがでしょう。
公園には、龍岡城五稜郭の星型城郭をデザインした、広い芝生広場のほか、複合遊具や健康遊具、そして夏場に水遊びが楽しめる遊水地もあります。また、季節ごとに桜やいろいろな木々や草花が植栽されていますので、散策なども楽しんでいただけるでしょう。
春にはお掘を囲む桜でお花見を
龍岡城五稜郭 桜③(令和5年)
(DL:2024/12/25、撮影:佐久市、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス表示 4.0 国際から転載)
龍岡城は長野県内でも有数の桜の名所として知られています。
お堀に沿って咲き誇る桜を眺めてお花見ができます。ソメイヨシノやベニヤマザクラなどの桜が植えられているので、開花時期に合わせて長期間お花見を楽しんでいただけるのではないでしょうか。
また五稜郭の入り口には石碑が建ち、当時の面影を残す橋がかかっています。桜とともに当時の雰囲気を味わってみてはいかがでしょうか。
展望台から「星型稜堡」を眺める
龍岡城五稜郭から山へ向かう林道の入口に「五稜郭展望台」があります。
山道を通る必要があるので健脚の方向けですが、展望台は星型稜堡を一望できる貴重な場所です。
独特な形の角度のついた塀は必見で、五稜郭の中からは見ることができない眺めを、ぜひ堪能してみてください。
龍岡城五稜郭へのアクセス
龍岡城五稜郭は、JR小海線臼田駅・龍岡城駅からともに徒歩約20分の場所にあります。
佐久平方面から向かう場合は龍岡城駅、山梨方面から向かう場合は臼田駅が最寄り駅となります。付近には、「龍岡城桝形跡」「五稜郭 であいの館」などの関連施設もあるので、歴史に触れる散策を楽しめるでしょう。
車の場合、上信越自動車道「佐久IC」から約30分です。前述の「であいの館」「五稜郭公園」には無料駐車場が整備されているので、電車の時刻を気にすることなく、ゆっくりと観光を楽しめます。
当時の面影を残しながら、近年までは地元の小学校敷地として使われていた、珍しいお城です。四季折々に異なる景色も楽しめる龍岡城五稜郭、ぜひ足を運んでみてください。