佐久・中山道さんぽ 第5弾|岩村田宿:暮らしの中にある宿場町 商人の歴史と人の営みを感じる町

こんにちは。プラザ佐久です。
天気の良い日は、どこかへ出かけたくなりますよね。佐久市の中山道沿いには、のんびり歩いて楽しめる宿場町が点在しています。
今回の連載では、各宿場町の魅力や見どころをご紹介します。宿場町を巡る「歴史さんぽ」はいかがでしょうか。
第5弾は「岩村田宿(いわむらだしゅく)」です。
岩村田宿は商人の町として栄え、今も佐久市の中心地として活気を保っています。
その独自の歴史や、寺院が本陣・脇本陣の役割を担った背景、現代に受け継がれる町のにぎわいなど、他の宿場町とは異なる魅力が詰まっています。
本記事では、岩村田宿の歴史・見どころ・現代の姿をわかりやすくご紹介します。

岩村田宿とは

岩村田宿は、江戸時代に本陣・脇本陣を持たず、商人の町として独自の発展を遂げた宿場町であり、今も佐久市の中心地となっています。

岩村田宿に本陣がなかった理由とは?

それは、元禄十六年(1703年)に内藤氏により岩村田藩が成立し、この地域が藩の中心となったためだそうです。特に、幕末に岩村田城(藤ヶ城)が築かれると城下町としての町割りが本格化し、大名や幕府高官などの宿泊は藩主や城主が管理していたため外部の有力者が自由に宿泊することが制限されていたそうです。
こうした背景から、旅籠の数も少なく、天保14年(1843年)当時で家屋350軒のうち旅籠はわずか8軒のみで、周辺の寺院が本陣・脇本陣の機能を果たしていたと伝えられています。

岩村田藩成立に際して岩村田が選ばれた理由は、政治・経済・交通の中心地としての機能が備わっていたためだそうです。
鎌倉時代に信濃でも有数の都市として発展(戦国の世で一時衰退したが再興された)し、江戸時代には米穀の集積地であり、中山道・善光寺街道・佐久甲州道・下仁田道の分岐点として、交通の要衝であったとされています。

本陣・脇本陣に代わり、問屋が町の政治や運営にも深く関わっていたそうです。
問屋は「上の問屋」・「下の問屋」の2軒体制で半月交代で業務を分担していました。他の宿場町では宿泊や人馬手配が主な役割でしたが、岩村田宿は交通の要衝であったことから、商業取引・物資流通に関する業務が活発で、佐久地域一帯の経済の中心地としてにぎわっていたそうです。
こうした背景により、岩村田宿は本陣・脇本陣を設けず、寺院や問屋がその役割を担うという、中山道でも極めて珍しい形態をとりました。その結果、商人の町として発展していったとされています。
参照:佐久市
   信州佐久旅の観光ガイド
   佐久商工会議所:佐久歴史の道

町並み・見どころ

岩村田宿は、商人文化と現代の暮らしが融合した独特の雰囲気が魅力です。
歴史的なスポットや老舗店、寺社など、歩いて巡れる見どころが点在していますので宿場町さんぽをしながらその魅力を体感してください。

岩村田商店街にある「天神堂商店街 駐車場」は岩村田宿へアクセスしやすい無料の駐車場です。

商業活動の拠点とそれを支えた2つの寺院

岩村田宿は、問屋が物流の中心を担い、寺院が本陣・脇本陣の役割を果たすという、全国的にも珍しい町の仕組みで発展してきました。
現在の商店街は建て替えられていますが、町割りや道筋に当時の面影が感じられます。

問屋建物(上の問屋:荻原家・原家、下の問屋:依田家)

宿場運営や物流の中心であった2軒の問屋は、「上の問屋」が本町の龍雲寺の南側にあり、「下の問屋」は相生町の交差点の北側にありました。
これらの問屋が商業の拠点となり、宿場町の発展を支えました。

岩村田宿では、龍雲寺が本陣、西念寺が脇本陣の役割を担っていたそうです。
本陣・脇本陣の役割を寺院が担っていた理由は、寺院特有の広い敷地や格式が適していたためです。大広間や専用の部屋を提供し、宿泊・会議・儀式の場として利用されていたそうで、単なる宿泊施設としてだけでなく、重要な情報交換や公的な行事の拠点にもなっていました。

歴史と信仰に触れる寺社と史跡

若宮八幡神社(岩村田八幡神社)

宿場町の氏神として古くから地域の信仰を集めてきた神社です。
毎年7月中旬の「岩村田祇園祭」では、神輿が町内を巡ります。当日は歩行者天国となり各種イベントも開催されるお祭りです。
参照:岩村田商店街

引用:佐久市デジタルフォトギャラリー

住吉神社

岩村田宿の入り口で、江戸方の枡形近くにあり、この付近から岩村田宿が始まります。
戦国時代の文明年間(1469〜1487年)に創建され、庚申塔や道祖神、石祠などが祀られています。

鼻顔稲荷神社(はなづらいなり)

岩村田宿の北側にある湯川の断崖上にあり、朱塗りの鳥居や境内の雰囲気が印象的な神社です。
江戸時代には「おこもり」と呼ばれる、主に女性が遠方から参拝に訪れる風習が盛んで、稲荷町・花園町は鳥居前町としてにぎわいました。
毎年2月11日の「初午祭」では、湯川のほとりで奉焼祭(ほうしょうさい)が執り行われ、1年間お世話になったダルマのお焚き上げをし、縁起物の販売も行われます。

引用:佐久市デジタルフォトギャラリー

岩村田城址(藩陣屋跡)

本町商店街の南東側に造られ、現在は宅地化や小学校、公園の敷地となっており、一部に土塁や城址碑が残されています。

旧中山道と旧旧中山道

岩村田宿には「旧中山道」と「旧旧中山道」という2つの道筋があります。
旧中山道は江戸時代中期以降に整備され、現在の岩村田本町商店街を中心としたメインストリートとして残っている道筋です。
旧旧中山道は、江戸時代以前から使われていた古い道筋です。現在の旧中山道から一筋奥に入った道筋で、佐久ホテルの前を通っています。
岩村田宿を訪れる際は、旧中山道と旧旧中山道の両方を歩き、宿場町の歴史や文化の奥深さをぜひ体感してみてください。

暮らしとともにある岩村田宿の“いま”

岩村田宿は“いま”も佐久市の中心地として地域の暮らしと密接に結びついています。
歴史的な町並みと現代的な商業施設が共存し、学校、警察署、病院、商業施設が集まり、佐久市の拠点として地域のにぎわいが続いています。

現代のにぎわいと周辺スポット

岩村田本町商店街は、地域の暮らしや交流拠点として活気にあふれ、地元の小学校や商業施設と連携しながら多彩な地域活動やまちづくりが進められています。

おいでなん処

商店街の中心にある蔵造りの建物は、現在「おいでなん処」としてコミュニティスペースに生まれ変わっています。
ここは子どもや子育て世代が気軽に立ち寄れ、学校帰りの子どもや地域住民の交流の場として親しまれています。

体験型地域活動

学習塾「岩村田寺子屋塾」や、昔遊びを学べる講座、農業高校生による販売イベントなど、体験型の地域活動も盛んです。
商店街振興組合や地域団体が中心となり、高校生が模擬株式会社の運営や起業家体験、地元企業との商品開発にも取り組んでおり、学校・地域・商業が一体となった新しいまちづくりが進んでいます。
参照:岩村田本町商店街振興組合
   三月九日青春食堂

つどいの館こてさんね

商店街の中心にある複合飲食施設で、歴史のある建物をリノベーションした現代的な多目的商業施設として生まれ変わっています。
多彩なジャンルの店舗が入居しており、共用のイートインスペースやフリーテラスもあるので気軽に食事や休憩ができます。
また、若手飲食事業者のチャレンジショップとしても運営されており、地域のにぎわいづくりに貢献しています。
参照:岩村田商店街オフィシャルサイト

佐久市子ども未来館(sakumo)

岩村田宿エリアにあり、宇宙や恐竜などの科学展示や、長野県内最大級のプラネタリウムがそろった体感型ミュージアムです。
歴史のある町並みの中で、新しい発見や感動に出会える拠点となっています。お子様連れの際には、ぜひ立ち寄りたいスポットです。
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地元に根付く老舗店

佐久ホテル

室町時代から続く長野県最古の老舗旅館です。岩村田藩主や参勤交代の大名、幕府役人などの接待・宿泊を担ってきました。
また、佐久名物「鯉料理」発祥の宿としても知られ、江戸時代から260年以上継ぎ足しの秘伝のタレを使った鯉のうま煮が名物です。
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戸塚酒造店

日本一小さな酒蔵としても知られている江戸時代から続く老舗酒蔵で、代表銘柄は「寒竹」です。
観光客や地元の人々に親しまれてきた、岩村田宿を代表する造り酒屋です。
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和泉屋商店

信州味噌のルーツ「安養寺味噌」を復活させたことで知られている味噌蔵です。
江戸時代後期の創業で、代表商品の「安養寺味噌」は、鎌倉時代に安養寺の禅僧・覚心上人が伝えた技法をもとに造られています。
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和泉屋菓子店

岩村田商店街の老舗和菓子店で、佐久や中山道の歴史や風土にちなんだ銘菓を製造・販売しています。地域の人々や観光客に長く親しまれています。
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岩村田宿を満喫するための過ごし方

歴史ある町並みをのんびり散策

旧中山道沿いに残る屋号看板や古い商家、寺院、江戸時代から続く町割りや道など当時の雰囲気を感じながら歩いてみてください。
龍雲寺や西念寺でかつて本陣・脇本陣の役割を担った歴史に触れたり、岩村田城址や町の史跡・石碑を巡り、城下町としての一面も体感できます。
また、日本五大稲荷のひとつとされる鼻顔稲荷神社や鼻顔公園で、季節の花や高台からの景色を楽しむのもおすすめです。

商店街で地元グルメを堪能

戸塚酒造店の日本酒や、和泉屋商店の安養寺味噌、和泉屋菓子店のご当地和菓子など、伝統の味を楽しみましょう。
商店街の飲食店や、複合飲食施設「つどいの館こてさんね」などで地元グルメを堪能し、ゆったり過ごすのもおすすめです。

イベントに合わせて訪れる

岩村田祇園祭や初午祭など、地域の伝統行事や季節のイベントに合わせて訪れると、町の活気や文化をより深く体験できます。地元の人々との交流も楽しみのひとつです。

所要時間の目安

岩村田宿の主要スポットは、徒歩で約2〜3時間で巡ることができます。歴史ある街並みをのんびり歩いたり、商店街でグルメやお買い物を楽しんだりと、ご家族やグループでの散策にもぴったりです。
周辺には飲食店やカフェ、子ども未来館(sakumo)など、子連れに嬉しいスポットも充実しています。ランチや体験型施設の利用を組み合わせれば、半日から1日かけて、じっくりと岩村田宿の魅力を味わうことができるでしょう。

アクセス・さんぽのポイント

・JR北陸新幹線「佐久平駅」からJR小海線に乗り換えて1駅、「岩村田駅」で下車し、岩村田宿までは徒歩9分です。
・佐久平駅から岩村田宿へは、車で7分、徒歩の場合は23分でアクセスできます。
・公衆トイレは駅にあるほか、岩村田商店街周辺にも数カ所あります。
 詳しい位置やルートは地図をご覧いただくと便利です。
Googleマップ

まとめ

岩村田宿は、商人の町として独自の歴史を歩み、現代では新しい魅力も加わり、歴史と暮らしが調和した宿場町さんぽが楽しめます。
家族連れから歴史好きまで幅広い世代がそれぞれの過ごし方を見つけられるエリアです。ぜひ現地で、岩村田宿ならではの歴史や人々の営み、そして今も続く“にぎわい”を体感してみてください。
中山道については、別記事でも詳しく紹介していますのでご覧ください。
歴史が息づく中山道・佐久の宿場町めぐり

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